山岡士郎観察記@


 

初期の山岡士郎!

彼には当時『牙』があった。

闘いのための「牙」が!

 

狼には何故、牙があるのか?

そう、『獲物』に噛みつくためだ!

 

山岡士郎、それは餓えた狼!

 

彼は獲物に後ろからゆっくりと近づき、

そして一気に喉笛を噛み切る!

 

山岡士郎は一匹の餓狼。

彼に背を向けたら最後だと思え!

彼に弱みを見せたら終りだと思え!

 

山岡士郎、それは餓えた狼!

 

 

 

そんな感じで、彼のギラギラした部分を余すことなく見られるのが、

やはり初期の初期、1巻〜5巻くらいだろうか。

現在はコミックも80巻ほどにもなり、子供も生まれている山岡士郎。

連載初期には、彼がこんなになるとは誰も思わなかったに違いない。

いやさ別もの。

俺は、口が横に付いてる山岡士郎を猛烈にプッシュします。

 口はへの字だ!

 

 

 

美味しんぼ・はじめて物語

海原雄山編でも書いたのだが、一応美味しんぼのストーリーを説明。

この山岡士郎、漫画『美味しんぼ』の主人公である。

グータラ・無能社員と呼ばれ、いつも編集デスクで寝てるというホントに何やってんのか解からん男である。

が、第1話で豆腐と水の試験を見事クリアし、究極のメニュー作りの担当に抜擢。

新人・栗田ゆう子と二人で新聞社創立100周年企画の担当をやって行くこととなるのだ。

って、よく考えるとホントに大抜擢だ。

 

それにしても、この大抜擢される際の山岡は、ホントに何考えてんのかわからん。

豆腐を「カポン、カポン」と口に放り込んで、

『ワインと豆腐には旅をさせちゃあいけない』とか、わけわからんこと言ってるところから、

電波が入ってると思われても、おかしくは無い。

そんな不精ヒゲの男にこんな大任を負わせた大原社主は、

きっと大天才か大馬鹿であるか、どちらかであろう。

ちなみに、後の帝都新聞社長とのイザコザを見るに、

後者ではないかと思われる。

まあ、社長ってのは、何処行ってもちょっとおかしいものなのかもね。(←一応フォロー)

 

それより何より、

『今日の昼食は高級料亭・白羽だって…何が食べられるのかなあ??』

とか思って、ワクワクしながらお昼の時間を待った一般社員は、

水と豆腐しか出てこなくって、かなりゲンナリしたに違いない。

 

てか、こんなテストは高級料亭でやる必要ないよなあ・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

山岡士郎の事件簿

山岡士郎(27)、文化部社員。

会社ではソファーで寝ていて、寝ぼけて雑巾で顔を拭くような人物であるが、

一旦食べ物屋に入ると問題を起こしまくるという、

よく考えるととても厄介な人物である。

 

さて、こんな厄介な人物が、早くも第2話からその本領を発揮する。

あと、この話には初期の『美味しんぼ黄金パターン』があるので、是非紹介して起きたい。

 

 

第2話:味で勝負

山岡たちは、社主と共に高級っぽい所で「文化人」、いわゆるグルメな方々との顔合わせ。

 

作曲家    『よろしい、黒海のキャビアを取り寄せましょう』

評論家    『それじゃ、タイから燕の巣を持って来なくては』 

エッセイスト 『パリで食べた、子牛の喉肉のパイ皮包み焼きが忘れられないなあ』

芸能評論家 『私はフランスから、美食の王「フォワ・グラ」を取り寄せましょう。

         フォワ・グラはガチョウに茹でたトウモロコシを大量に与えて、運動をさせずに太らせて、

         その異常に肥大した肝臓で作るのですよ。

         どうです山岡さん。やはり「究極のメニュー」には欠かせませんでしょう?』

 

 

と、テキトウな職業のキャラクターに、テキトウな珍味の名前を羅列させるあたり、

さすが原作・雁屋哲と言いたい。

俗物を描かせたら天下一品だ。

 

ちなみに、このキャラの中に『漫画家』『劇画原作者』がいないのは、

陰謀でもなんでも無く、たぶん偶然であろう。

 

 

さて、そんな彼等に辟易したのか、山岡は「ふん」と鼻を鳴らし、

ふんぞり返って大声で叫んだ

 

 

日本の食通と

たてまつられてる人間は、滑稽だねえ!

 

 

ついにヤツが噛み付いた!

 

喉もとに!

 

がぶりと!

 

でも、君は一体何処を見てるんだ!?

なんて突っ込んでみるも、この男は止まらない。

 

『外国人が美味いっていうから、その馬尻に乗ってありがたがってるけど、

 有名ブランド品をありがたがるのと同じ・・・・・・・・・・

 中身じゃなく名前をありがたがってるだけなんじゃないの?』

 

と、ダメ押し。

 

『な・・なんだと!』

と、胸倉を掴んでくる評論家の手を、ぎりぎりと絞りあげて

『一番美味いと思うフォア・グラを用意しな!

 それよりはるかに美味いものを味わわせてやる!』

と宣言。

 

ああ、山岡がカッコイイ!!

アウトロー(?)な、山岡サイコー!

そして、はるかに美味いものっていう台詞が、自信あふれすぎ!

 

初期の「美味しんぼ」は、こんな風に山岡がよく噛みついて、俺は大喜びな訳ですが、

その噛みつき方のほとんどが不意打ち気味。

でも、噛み付かれる方も、噛みつかれるだけじゃなく、胸倉掴んだりして実にアグレッシブ!

途中、包丁ブン回したりする危ないヤツも登場するなど、

その攻撃的な面も多岐に渡ります。

ってか、出て来るキャラ皆がみんな、

食べ物に対してバカが付くくらい熱くなるのが初期のいいところ。

 

『お前らなんで、そんな事でこんなに盛りあがれるんだよ!!?

 俺も混ぜろよ!』

 

と、思わず入りたくなるくらい熱いんです。

で、その中でも1番アツいのは、父・海原雄山だったりするのが、あれだよね・・・・・・・・。

 

 

閑話休題。

話は戻って1週間後、山岡は茨城の海にいた。

季節はずれのアンコウ、それもが食えるデカイやつを捕らえるためだ。

 

「いやあ、参ったよ、取れやしねえ。」

「冬の魚だ、ありゃあ、今は5月じゃもん。」

 

そう弱音を吐く漁師たちに

 

『泣きごと言わんで、取れるまでやるんだ!

 文句ばかり言ってると、海ん中にたたっ込むぞ!』

 

と、理不尽な事ばかり言いつつ、ご希望のアンコウをGET。

ここらへんの無茶っぷりは、父・海原雄山の血を色濃く受けていると言えます。

きっと、アンコウが取れなかったら本当に彼等を海に叩き込んで、海外逃亡でもやらかしたに違いありません。

無茶は通しちゃえば道理が引っ込むってもんです。

これは世界の真理です。ええ。

 

んで、無事アンコウが取れたので、

山岡は、懐から何気なく包丁セットを取りだし、

馴れた手つきで素早くアンコウを捌く。

 

『アンコウってのはグニャグニャして、まな板の上においたんじゃ切れない。

 だからこうして吊るして、水で膨らませて切るんだ。』

 

こうして、かの美食家達の前に『アンキモ』を出すに至るのである。

山岡は言う、

『深海の自然の中で育った、健康そのもののアンコウの肝臓と、

 人間の小賢しい悪知恵で作り出した病的な肝臓と、はたしてどちらが美味いか!?

 しかもこのアンキモは取れたばかりをその場で調理した。

 フランスから送ってきたフォア・グラとでは鮮度も天と地ほどの差がある。』

 

と、うんちくを述べる山岡に、

美味しい!

 コクのある味わいは、フォアグラに劣らないと思いますけど・・・・・・・・・・・・。』

 

と、ゆう子も後方支援。

その絶妙なタイミングは、まるでTVショッピングのよう。

後期になると、この後方支援もなぜかちょっと理屈っぽい嫌なかんじになってしまうのですが、ここでは

後期には見られない清々しさがあります。

 

 

こんな感じで捲くし立てられ、納得させられそうになるのが「美味しんぼ」。

いや、山岡の真骨頂である。

しかし、じゃあ和牛にビール飲ませるのはどうなんだ、とか、

北京ダックは「ガーガー」言ってるダック君に、

無理やり何かを食わせて体パンパンにするぞ!

とか色々出てきそうな気もするが、

後半の部分が実は重要だってことを、山岡は言いたいんだよね!?きっと!

と、皆さんは騙されたと思って無理にでも納得してみよう。

 

してください。

 

 

さて、かなり自然な感じで納得した貴方。

そんな貴方の脳の奥底では、この時

アンキモ > フォアグラ

の公式が完成しているはずです。

 

この公式の応用としては

お酒というカテゴリーで 日本酒≒ワイン となる時、

アンキモ+日本酒 ≧ ワイン+フォアグラ

という式が、奇しくも成立してしまいます。

 

で、その結果

そこらの一杯飲み屋 > フランス料理屋

 

ってことが成立しかねません。

成立しかねないどころか、

俺はもう、小学校からこんなうんちく漫画を繰り返しくり返しくりかえしクリカエシ読んでいるので、

もう、アンキモ>フォアグラの公式は意識下にまですり込まれてしまっています。

アンキモとフォアグラ、どっちがいい?って聞かれたら、一瞬本気で悩みます。

 

これは確実に、『美味しんぼ症候群』とか言って、

現代病として厚生省から認定されるに違いありません。

患者第1号は私と言うことで。

とまあ、こんな風にならないように、

美味しんぼの読み過ぎには十分注意し、用法、容量を守って利用することが大事ですね。

 

 

 

 

以上、こんな風に第2話を見て来たわけですが、ここには

 

食べ物の話浮上⇒問題発生⇒

山岡ブチギレ⇒相手をへこます⇒山岡、うんちくを披露

 

と言う、初期の黄金パターンが、既に2話にして確立されている事に、

多くの読者は驚かれるに違いありません。

びっくりですな。

 

 

 

 

ところで、アンキモといえば・・・・・・・・

 

アンキモ、それは呪文である。

いや、アンキモは呪文だったのである。

 

これを見て『?』と思った人は、安心してください。それが普通です。

ああ、アレね!とか、思わず納得しちゃった方は、

重度の美味しんぼ症候群(gourmet syndrome)にかかっている可能性が大有りです。

速やかにアニメ版『ミスター味っ子』や、『中華一番』等を見て、その毒を中和する必要があります。

雁屋哲は猛毒です。

初期の『雁屋節』というと、それはもう・・・・・・

 

 

『今の世の中が乱れ、腐りきっているのは、

 のように卑しい大衆が好き勝手に振舞っているからだ!

 大衆は己の欲望を満たすことしかしないだ!』

 (雁屋哲原作「男組」より)

 

ああ!神竜 剛次アツすぎ!

ってか、もう突っ込むゆとりもねえ!(T-T)

 

ってな感じに逝っちまうので、雁屋毒は中和が必要です。

 

 

んで、アンキモ呪文の件だけど、

コレはかの有名な『ファミコン版・美味しんぼ』に端を発するものなんだ。

ってことで、このゲームをちょこっとだけ紹介。

 

徳間書店の大技林をひもとくと、

『このソフトは89年にバンダイから5800円で発売されたソフト。

 基本的にはオーソドックスなアドベンチャーだが、

 『切る』『焼く』などのちょっと変わったコマンドもある。』

と、いたってまともそうに書かれてるけど、

どう見てもこのゲームはオーソドックスじゃあない。

いや、どっちかって言うと酷い。

今の美味しんぼファンから見ると、かなりぶっ飛んでいるゲームなのである。

 

いや・・・・・・・当時ですらそうだったのかも・・・・・・・・。

 

 

 

これがファミコン版美味しんぼ。

ファミコンなので、グラフィックがヘロヘロです。

 

 

 

アンキモの逸話は第1話(1面?)、今回紹介した『アンキモ』勝負の話に早くも登場する。

山岡さんはアンキモが何処で取れるのか、ヒントを得るために町を徘徊。

そこで小料理屋をみつけ、そこを覗くと・・・・・

 

『誰だ!覗きをしてるやつは!』

 

と、いきなり警官が注意してきます。

ここで山岡、なぜか警官と戦闘開始。

 

直後、

 

「たたかう」

「にげる」

「呪文」

と、今までアドベンチャーゲームだったのにも関わらず、

ドラクエ風のコマンド選択画面が出て、プレーヤーの思考を軽く頭蓋からふっ飛ばしてくれます。

 

思考力の無い手で呪文を選択すると、

 

 

 アンキモ!アンキモ!アンキモ!

 

狂ったように山岡は叫びだし、そのまま投獄。

 

GAMEOVER−アンキモどころではありませんね−

と、実にもっともなメッセージと共にゲームは終了。

 

はじめてこれを見た時、俺は目が点になりました。

しかし数瞬後、『ああ、山岡は狂ってしまったのか。』と、

何気なく納得してしまう所に、真の狂気

このゲームをべったりと包んでいるような気がしてなりません。

って、これは考えすぎでしょうか?? (たぶん考えすぎ)

 

 

ってなわけで、『アンキモ』は呪文だったのである!

異論は許さないが、反論は甘んじてうけよう。(矛盾)

 

 

 

以上、オチらしい落ちは無いけど、『山岡士郎観察記@』今回はここまでだ!

 

 

次回予告:山岡の怒りがついに爆発する!

       次回『地雷!山岡士郎!』をお楽しみに!


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