山岡士郎観察記A


地雷!山岡士郎!

 

山岡士郎は歩く地雷だ!

いや、踏まなくとも自ら爆発する時もあるので、あるいは不発弾ッ!

 

ならばッ!

 

海原雄山は、走る核弾頭!

士郎よりもスピード・パワー共に上だぞ!

 

とか、そんなバカなこと書いてないでさっそく本題に。

今回は、不発弾・・・もとい餓狼・山岡士郎に喉笛を噛み切られた残念な方々のプロフィールと、

その回のちょっとした紹介、名台詞を紹介したい。

題して『山岡士郎被害者の会』。

 

 

 

 

山岡士郎被害者の会@


 会員No1:芸能評論家 川本広増  1巻第2話『味で勝負』

  心の名台詞 『栗田さんは、フォアグラを食べたことがおありかな?』

 内容:

   この回の詳細は前回にて。山岡が爆発した記念すべき第1回目にして、その被害者第1号。

   ある意味、第1号は光栄の極みである。

   山岡士郎に『日本の食通とたてまつられる人間は、滑稽だねえ!』と、

   罵倒され、その後、フォア・グラよりも美味いと言ってアンキモを食わされ、

   長いうんちくまで聞かされる。

   ついでに、一緒にいた食通仲間ともども、

  究極のメニュー作りから外されるなど、その被害は甚大かもしれん。

 備考 :

   『栗田さんはフォアグラを食べたことがおありかな?』などと、

   安易にフォアグラの話をふったのがいけなかった。

   アンキモと比較されかねないので、

   山岡にはフォア・グラの話題をふってはいけないという教訓がここにある。

   また、この回は、俺にアンキモ>フォアグラの公式を刷り込んだという一点で、実に罪深い回である。

 

 


 会員No2:銀五郎寿司のオヤジ 銀五郎  1巻第3話『寿司の心』

 

心の名台詞 『何い!? バカなッみんな舌がどうかしちまったんじゃねえのかい!

          俺が負けるはずがねえ!』

 

 内容:

   この回の中心は、なんと言ってもこの銀五郎寿司の銀五郎。

   初期「おいしんぼ」の悪役キャラを体言したような容貌と、その言動から

   隠れファンが約7万人はいると思われる。ちなみに私はファンではない。

 

   『ちぇっ!なんだいその寿司の持ち方は!

    それじゃあせっかくの寿司がだいなしだよ!

    俺の寿司は芸術品なんだよ!それを崩しやがって!

    てめえらに食わせる寿司はねえ!帰れえ!』

 

   と、自己陶酔に近い言動は、怒りを通り越し、なぜか笑いを誘う。

   寿司の持ち方が悪かったり、『美味しいところを頼むよ』なんて言ったりすると、

   確実にこの仕打ちを食らうので、この店に行く時には注意が必要だ。

 

   不景気の現在、こんな店が実際にもつわけはないが、ちょっと疑問に思うのは、

   バブル期でもこんな店が成立するものだったのだろうか?ということだ。

   昔よく、TVでやってた頑固オヤジのやるラーメン屋も、ホントに存在するのか怪しげである。

   普通、誰も行きたがらないよね。アレ。

 

   そこで考えるに、この「銀五郎寿司」は仮の姿。

   実際かの店は『怒り屋』なのではないだろうか。

   もちろん、『怒られ役』は客のほう。

   そう考えると、

   『スマンスマン、気をつけるよ。』

   『いやまったく、銀五郎のオヤジの寿司は芸術品だな。』

   なんて、誉めてるのか子馬鹿にしてるのかわからない台詞が、

   怒られた客から出て来るのも納得がいく。

   怒った相手にこんな風なことを言われたら、普通はもっと怒るだろうからね。

   これで怒らないのは、野獣モードのジャイアンか、この銀五郎だけである。

 

   逆に、これで気を良くしてしまう銀五郎は、

   『怒り屋』として修行が足りない。実に足りない(色々な部分が)。

   怒られ役のお客さんの「巧妙な駆け引き」に付いて来れないのだ。

   これじゃ、次回は指名されないぞ!

   と、こんな妄想は、最終電車が去ったホームにでも置き去りにするとして、本題へ。

   

   山岡御一行が、この銀五郎寿司に食べに来る所から、事件に火が着くこととなる。

   まだ新人でウブだった栗田さんが、寿司の注文に手間取ってたところ、

 

   「け!自分が何を食いたいのかわかんないのかよ!

    貧乏人の小娘はこれだから嫌になる。」

   「おたくはうちみたいな一流の店では無理だよ。

    スーパーか何かで売ってる、パックの寿司でも食ってりゃいいんだ。」

 

   と、銀五郎がこれ以上ない罵詈雑言を浴びせます。

   テープに取ってれば、名誉毀損で起訴できるレベルです。

 

   しかしそこで、隣りで見ていた山岡士郎が売り言葉に買い言葉。

   『こんな店の寿司より、スーパーのパックの寿司の方が、よっぽど美味いぜ。』

   『確かに、ネタは最高、シャリも最高。だがオヤジ、肝心のお前の腕が最低だ。

    折角のネタもシャリも泣いてらあ。』

    と、いつもの展開に。

 

   この時、銀五郎が「ぶっ殺されてえのか!この店は日本一と折り紙付けられてんだ!」

   と、刺身包丁掴んで凄むシーンは、もはや客と主人のやり取りじゃない。

 

 

   さて、次の日。

   山岡士郎は寿司名人と銀五郎を対戦させ、銀五郎をとことん追い詰めます。

   対戦ルールは目隠し寿司。

   目隠しをして寿司を食い、どちらが美味いかを言う、ただそれだけのことなんですが、

   絵面だけみると、何か変な趣味人の集まりのようにしか見えません。

 

     富井副部長、何故か死にそうだし。

 

   こんな極限状態な雰囲気を醸し出しているのが「寿司屋」ってのも、

   もはや世紀末的。(特に、1番右の副部長)

   でも、皆さんは目隠しされつつも、『右のほう(名人の方)が美味い〜。名人の方が美味い〜。』

   と、銀五郎を精神的に追い詰めます。

 

   『何い!? バカなッみんな舌がどうかしちまったんじゃねえのかい!

    俺が負けるはずがねえ!』

 

   と、叫ぶ銀五郎。

   まるで自信の源泉のような台詞。さすが銀五郎。

   皆から『おまえは負け犬だ』という烙印をジュウジュウと押され、

   追い詰められているにも関わらず、こんなことを言えるなんて、なかなかの胆力です。

 

 

   そんな、負けを認めない銀五郎に対抗するためか、

   はたまた自分の勝利をより完璧なものにするためか、山岡一行は大学に赴きます。

   士郎がわざわざ大学病院のCTスキャンまで使って見せたもの。

   それは

   寿司の輪切り写真。

 

    寿司の中身はお米が詰まってるんです。

   士郎からこんな依頼を受けた大学職員は、

   むしろ山岡自体をスキャンにかけたいくらいだったでしょうが。

 

   でも、そんなのはお構いなしに、山岡は叫ぶ。

 

   『これでわかったかい!おまえの寿司の不味いわけが。

    おごり高ぶった心で握れば、シャリもガチガチに固まってしまうんだッ!

    心のこもってない寿司はただのシャリとネタの塊だ!寿司じゃねえ!

    おまえの寿司がそれなんだよ!』

 

   と、「おまえギューっと握りすぎ!」ってことを、精神論付きで長々と言い放ってくれます。

   CTスキャンは、これを言うためのいわば演出。

 

   もう、なんだかわかんない程に言い込められた銀五郎。

    『この銀五郎をどうしようってんだ・・・・・』

   と、もう散々。

   ここまで完膚なきまでに叩き潰されるキャラも、かなり珍しいですが、

   これが山岡に歯向かった報いなのでしょうか!!?

 

 

 備考 :

   この回の冒頭、山岡が栗田からおにぎりを手渡され、

   一口食べて『30点』と言うシーン。

   あれ、俺好きなんだよね。山岡がぶっきらぼうすぎて。

   普通、人から何か貰ったら絶対的評価はしないだろう。

   『100点満点で30点です』

   とか、丁寧に言っても全然丁寧じゃないし。

 

   やっぱ、初期の山岡はすごいや。

 

   ちなみに、寿司の教訓を聞いたあと、おにぎりを柔らかく握ってきた栗田さんから、

   『もらっておく』と、さりげなく奪って行く山岡もなんかカッコいいよなー。

   俺はこれを読んで、おむすび握る時必要以上にゆるく握りすぎるようになっちまったし。

   思えば罪な漫画である。

 

   それと、スーパーの寿司と言えば、

   昔、よく吠える犬がいたのでその檻に海苔巻きを放り込んだことがあった。小学生の頃の話。

   カラカラに干乾びたのり巻きを檻に放り込んでみると、

   何日かのち、何故かその犬を見なくなった

   あの犬は一体何処に行ったんだろう???

   そんなことを思い出してみるに、銀五郎の寿司はそれ以下だというのだから、

   山岡さんが怒るのも無理からぬことである。

 

 

 


 会員No3:栄商通運グループ総帥 板山秀司 1巻第8話『野菜の鮮度』

  心の名台詞 『ふざけるな!忙しい私を連れ出しておいて、トマトを食わせるだけだったのか!』

 内容:

   この回のストーリーは『成りあがった社長に対する一匹狼の山岡の比較』とか、

   『成功するがゆえに、見失いがちになってしまうもの』みたいなものを一本のテーマにして描いていて、

   意外ときっちり収まってる話である。

   が、そんなきっちりしたテーマも、美味しんぼの構造に当てはめると、途端にいびつになるから面白い。

   そのいびつさが、上の「心の名台詞」に良く出てると思うんですよ。

   よ〜〜〜く、噛締めて見て下さい。

 

   『ふざけるな!忙しい私を連れ出しておいて、トマトを食わせるだけだったのか!』

 

   ほら・・・・・・・・・・・・・ね。

 

   そりゃ怒るよな。

 

   と、無難な感想を持ち得るくらい解かりやすい怒り方です。

   てか、ふつう怒ります。

 

   さて、この怒っている方、良く見ると、北斗の拳のやられキャラの髪型をしていますが、

   美味しんぼ読者ではもうお馴染みの板山社長です。

   山岡の毒牙にかかりつつも、持ち前の成金根性でレギュラーを勝ちとった、数少ないキャラクターでありましょう。

   そんな彼も、初登場の回では、

   山岡に大根1本の被害及び精神的な損傷をこうむるという、多大な被害を受けることとなります。

   舞台は開店寸前のデパート。お披露目として『食材に力を入れている」所を大々的にアピールするのですが、

   ノコノコやって来た山岡士郎は、トマトを手にとってはそこらに投げ捨て、

   さらには手近な大根手に取ると、いきなり折って、

   『見てくれだけか』と、ほっぽり投げる始末。

    器物破損の瞬間。板山社長(右)も急な事でビックリです。

   さらにこの後、「ここに俺達が取材する価値はない。」と言って立ち去って行こうとする山岡。

   考え方によっちゃあ、食ってかかられるより腹立ちます。

 

   この後、板山社長は『東西新聞への広告を一切取りやめる』という無茶苦茶な手段に出て、

   資本主義の恐ろしさをこれでもかとばかりに見せ付けてくれます。

   って、そんな超個人的な事でそんなことやっちゃうと、いろいろと問題が出てきそうですが、

   ワンマン経営の大会社って事でそこは見過ごしておきましょう。

   ほら、デパートでもワンマン経営のところっていくつかあるじゃあないですか、そごうとか。

 

   んで、このあと起死回生として、山岡が『野菜の生け作り』を出し、

   野菜の本当の美味しさを訴えて、なんだかんだ言って丸く収まるという、いつもどおりの展開。

   終ってみれば、板山社長は山岡のアイデアを頂いて上手いこといったりして、

   実は美味しいとこ取りだったりするわけです。

 

 備考:

   板山社長は『野望の王国版・山岡士郎』(俺フィルターを5枚ほど通ってます)にとって、

   野望実現の第1歩と言っても過言ではない。

   野望の王国版・山岡士郎については後に論ずるとして、

   この後続々と山岡の周りには十結集よろしく大物が現れてくるのだ。

   山岡士郎、その野望とはいかに!?

 

 

 


 会員No4:宝華飯店の料理人 2巻第1話『手間の価値』

 

 心の名台詞 『フン!日本人に中華料理の味がわかってたまるか!』

         「きゃっ!殺される!」

 

 内容:

   場所は横浜中華街。同僚達に連れられ、山岡は『行列のできる店』に入って行く。

   だが、そこで見たものは、有名になったがゆえに傲慢になった店と、手抜きの豚ばら煮こみだった!

   山岡は叫ぶ。

    『この豚バラ煮込みはできそこないだ、食べられないよ。』

   わざわざ店員を呼んでから言うあたり、

   山岡はかなりのご立腹だったよう。

 

   こんなところは、山岡が確実に雄山の血を受け継いでることの表れとも見えますが、

   雄山だったら『できそこないだ、すぐに作り直して来い!』とか、

   もっと厄介なことを言いそうだけどね。

 

   んで、それを聞きつけた店の料理人が

   「作って見ろ!私の作るのより美味しいの作ってみろ!」

   と、包丁を持って襲い掛かってきます。

   彼の怒りっぷりと言ったら、

   「きゃっ!殺される!」と、生命の危機を感じるほど。

   こんなに怒るなんて、頭にいけないバイ菌でも、入ってしまったんでしょうか。

 

   んで、こうなると、この中華屋は

   「怒りまくってる山岡と、これまた怒りまくってる料理人が店の中」な状態。

   このまま行くと、血で血を洗う、凄惨な闘いになり、

   山岡が 『もう・・・・・・これ以上血を見るのはゴメンだ』とか言うことになりかねません。

   そこで登場するのが、中華街のボス・周懐徳。

   この中華料理屋を経営する男にして、中華街を取り仕切るボスである。

 

   そして、もちろん彼のモデルは、あのコック帽被った周富徳。

   そういえば、モデルになった彼は今、どうしてるんでしょう?

   脱税事件からこのかた、深夜番組にしか出てないなあ。とか、

   「周富徳の弟子の店」とかいう、微妙なふれこみの池袋の台湾料理屋は、イマイチ微妙な味だったなあ。とか、

   色々思い出せるわけですが、そんな彼がこの場の調停役となり、ことは血を見ない平和的解決に至る訳です。

 

   んで、山岡はこの周大人(しゅうたいじん、またはターレンと読む)の豪邸で、いつも通り料理対決。

   対決料理は『トンポウロウ』だ!

   俺は食べたことないぞ!

 

   双方から差し出される料理。

   それを周大人が口にするわけですが、山岡の料理はべた褒めし、

   自分とこの料理人の出したものは

   『(トンポウロウではなくて)ただの豚バラ煮込み』

   と、一刀両断するあたり、大物感を醸し出しています。

   

   でも、言われた方はこんなに↑ションボリです。

   言った張本人がオーナーだし。彼の将来が心配でなりません・・・・。

 

 備考:

   実は、この事件が起きる前にもう一軒、山岡たちが中華街で入った店があったのだ。

   もちろん、そこも行列のできる店。ここでも士郎は爆発します。

   山岡は行列のできる店に連れて行くと必ず爆発する。

   これが今回の教訓です。

   さて、彼等が入ったのは、「忙しいから」という理由で麺類は1テーブル1種類という豪快なお店。

   店に入ってすぐ、

   「早く席についてよ!忙しいんだから!」

   と、客を客とも思ってない対応で、店側が山岡に軽いジャブ。

   ここで既に山岡はカチンと来ていたんですが、

   大砲(バズーカ)が飛び出るのは、次の取り皿のシーン。

 

   山岡  『取り皿が足りないんだけど』

        「うちはみんな一人一皿でやってもらうことになってますから。」

 

 『何!!?

  ゴマソースのものも、チリソースのものも

     同じ皿で取れって言うのか!!?』

 

   山岡ブチギレ!

 

   怒る所が『ゴマソースのものも、チリソースのものも同じ皿で取る』

   ってところが、あまりにも常人離れした怒り方です。

   ここらへんが、美味しんぼの真骨頂。

   俺、この台詞もう大好きなんで、

   食いに言ってお皿が足りない時にはもう使いまくり。

 

   『ゴマソースのものも、チリソースのものも

   同じ皿で取れって言うのか!!?』

 

 

   もちろん、ゴマソースもチリソースも無い場合が多いんですが、無視して使いまくりです。

   みなさんも是非使いこなし、自然にセリフが出るように練習しましょう。

   これは義務です。

 

 


 

 

 

 

さて、以上山岡士郎被害者の会@、いかがだったでしょうか。

山岡士郎、彼はなのです!

 

ってなわけで、第1回はこれで終了。

山岡の被害者リストはまだ続くんだ!

年明けを待て!

 


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